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疑惑のポッケ

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 「ちょっと気になっていたんだけどさ」
 ユウは自分の左側を歩く恋人、志保に向かって唐突に口を開いた。
 「その背中についてるチャックっていったいなんのためにあるの?」
 
 予想だにしない問いかけに志保は言葉に詰まった。
 「何のため、と言われたって、単なるデザインじゃないのかな。一応ポケットになってるから物は入れられるとは思うんだけど」

 「こんなところに物を入れても本人は取り出せないよな」
 カバンを左手に抱えたアキラは志保の代わりにそう答えた。
 彼は人の発言を先取りするのが得意なのだ。

 「チャックって、また古臭いことを。ジッパて言うんじゃないの?」と志保。
 「いや、ファスナだと思うけど・・・」と言いかけて言い直した。
 「ジッパもチャックも元は擬音語だからおんなじだね。開け閉めするときにそういう音がすることからつけられたと聞いた事があるよ。でもってファスナは・・・」

 「会社の製品名!」
 今度はユウがアキラを先取りして答えた。

 後ろからやりとりを聞いていた俺はちょっとあきれていた。こいつら、本当は仲が悪いんじゃないのか?
 まあ、後ろを歩いていて聞こえてきた会話だったが、友人や恋人同士のおしゃべりなんて大半がたわいもないものだ。

 「それにしても、デザイン以上になにか使いみちはないのかねえ。場所が場所だけにかさばる物は入らないとしても、有効利用していこうよ」
 「ユウがそこまでポケットにこだわる理由が分からないんだけど、志保は今までそのポッケ使ったことないわけ?」
 「ないわね。だいたい、この服は妹のだし。今日のブーツに合う洋服がなかったから黙って借りてきちゃったのよ」

 「じゃあさ、間違いなくそこに桃が入っている可能性はないとしてもだ、志保もなにかが入っていたとしてもそれは判らないわけだ」
 「桃って。アキラもつまらないこと言うわねえ。でも、なんにも入っていないと思うけど。開けたことないから断言はできないけど」
 「いやいや、そこにもしかしたら志保の妹の隠している何かが入っていて・・・」
 「開けてみよう」
 
 3人が意見の一致をみたらしいのを知って、俺は猛ダッシュで志保を突き飛ばし、唖然としている男2人を尻目に彼女の背中のポッケから「それ」を取り出すとすばやく逃げ出した。
 


 俺は、志保の妹、美穂と付き合っている。最近よそよそしくなった彼女に対して問い詰めたところ、俺が浮気している現場の写真が差出人不明で送られてきたと言うのだ。じゃあその写真を見せてみろ、と言ったところ、、、もうあとは皆がお察しの通りだ。
 
 志保が勝手に着ていった服のポケットに、その写真を隠していた、という美穂の答えを聞いて、出かけた先を探しまくり、ようやく見つけて後ろからそれを奪う隙を狙っていた、というわけ。
 突き飛ばされた志保には悪いことをしたが、そのくらいで済んでよかったと安堵すべきだろう。

 

 苦労して奪った写真には、ホテルから出てくる男女の姿。男はもちろん俺。
 顔を隠すようにして写っている女は、志保本人なのだから。





  
 



写真と本文は全く関係なく、すべて俺、テオの創作であることを断っておきます。
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by telomerettaggg | 2007-01-09 10:16 | KONICA BIG MINI