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あれもしたい これもしたい

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LeicaM6+CANON LENS 35mm f2.0 ELITE CHROME 





 おそらく、こう書いても不都合はないだろう「ショートショートの神様」こと星新一の作品に、題名は忘れたがこういうのがあった。

 人生に絶望したある男が、どこからかのツテである毒薬を手に入れた。一口飲めばたちどころに死ねる劇薬である上に、その味は、これまで経験したことのないほど極上の旨さであるらしい。
 彼はさっそく飲もうとした、が手を止めて考え直した。どうせなら絶望の駄目押しをする行動をとってからでも遅くないのではないか、と。

 それで、前々から思いを寄せてはいたが、間違いなく断られるであろうと思っていた女性に愛の告白をすることにした。失恋の結果に自殺するのならばいいだろう、ということらしい。
 だが、死を前にした彼の告白があまりにも堂々としたものだったらしく、彼女はなんとそれを受け入れてしまった。死に損ねてしまった彼はその女性と結婚し、次にかなり無理な方法で株に投資をしたり会社を興したりするが、どれも大成功する。

 地位も名誉も築き上げてしまった男は豪華な自宅の部屋の中で、手に入れた毒薬を出して、それを見る。そして、思いつく。

 すべてのことをやり終えた今こそ、これを飲むときだ、と。
 

 物語の最後は彼がその毒薬を飲み干すところで終わる。
 お金持ちになったことも、成功に成功を重ねたこともないボクは、それを読んで、何か違う、と感じた。
 ちょうど、昔話が「そしていつまでも幸せに暮らしましたとさ」という一文で終わるのと同じくらいの違和感だった。

 すべてをやり尽くした、なんて本当にあるのだろうか?と。
 これでもう満足、なんてことがあるのだろうか?と。
 
 今のボクには、やりたいことは山ほどある。
 いろんなことをやってみたくて、いろんなことを試してみたくて、
 それには絶望的なくらい時間が足りなくて、人生って本当にあっという間なんだってことを感じることばかりで。

 それは、逃げていく影を延々と追いかけるようなもので。
 でも、それでいいのだと思う。
 虚しさはなにかを追い求める過程に出る滓(おり)のようなものなのだから。

 あれもしたい、これもしたい。

 そう思っていられることの幸せは他のなにものにも代えがたいのかもしれない。







 
 
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by telomerettaggg | 2007-02-08 11:16 | CANON LENS 35/2.0