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素敵な出会い

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 近頃気づくと、ユウキ君は、自分より若い人たちの聡明さにびっくりすることがある。
自分はあの年齢のとき、どんなことを考えていただろう?
たぶん何も考えていなかったような気がする。
 おそらく、毎日食べて寝て、学校に行って帰って、その繰り返しだったような。
そんなことしか思い出せないのだ。
 そんな若かりし時代に、頭の回転が速くて、それなりの世界観を持っている彼や彼女たちのようであったなら、今頃自分の世界は変っていただろうな。
 そんなことを思いめぐらすのだ。

 そのことに気づいただけでもいいのかな、とも思うし、そんなことを考えるくらい歳をとったのかな、ということなのかも知れず、とはいえ、今、ユウキ君が考慮したいのはそういうことではなく、つい今しがた遭遇した、そしてユウキ君の人生を一変させることになる、ある人のことなのである。

 ノゾミさんとは、ふとしたきっかけで知り合った。
 せわしい世の中のこと、それもある程度年齢が進めば進むほど、新しい友人、ましてや恋人など、身近な半径2メートル以内で見つけるしかなくなるのだが、ノゾミさんはユウキ君が街中で立っているときに、いきなり声をかけてきたのだ。
 
 ナンパ?始めはユウキ君もそう思った。その直前に少し不思議な体験をしていたばかりだったので、身構えていた部分もあったのだろう、見知らぬ人が「あの、あなたももしかして・・・」などといわくありげに話しかけてくるなど、ナンパか宗教の勧誘かスカウト(なんの?)くらいしかないからだ。これまでのユウキ君の経験で言えば、そうだった。

 しかし、ノゾミさんの話しかけてきたことは、そのどれとも違っていた。それは、ユウキ君が今ここにいる理由とも重なるのだが、ノゾミさんもまた、ついさっきまで、不思議な体験をしたのだという。
 ユウキ君がさきほど思わず口に出した、はしたない言葉を、耳の端に捉えたらしく、つい声を掛けてしまったらしいのだ。
 「知らない人に声を掛けるのもどうかと思ったのですが」
 ノゾミさんは、さも恥ずかしそうにそうユウキ君に話し出した。
「こういうことって、そうそうないことですよね。それでついあなたの言っていたことが気になってしまったんです」
「たしかに。なにが目的であの男が声を掛けてきたのか理解に苦しんでいるところだったよ」
ユウキ君の話し方はいつもそっけないのだが、別に機嫌が悪いわけではなく、だいたいこんな感じである。普段から感情をあらわにするほうではないし、喜怒哀楽が乏しい、というより、そういう行為自体がエネルギィの無駄、と考えているフシがある。
 それに比べてノゾミさんはというと、少しおどおどしていて、自分の考えを遠慮しながら伝える、もしくはじっと黙っている、そういう性格らしい。

 そういうわけなので、今失った無駄なエネルギィを取り返すため(もしかしたらもっと損するかもしれない要素ははらんでいるけれど)ユウキ君のほうからノゾミさんをお茶に誘って、今、2人に起こった不思議な体験を話し合おう、と持ちかけたのだ。あの、黒ずくめの、2人の男女を別々の場所に立たせて、ただ待たせるという、一見意味のない行動をとらせた、あの貧相な男のことを。



 それが、結城香苗くんと、その旦那さま、望弘樹さんの出会ったそもそものきっかけである。
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by telomerettaggg | 2007-03-31 00:00 | CANON LENS 35/2.0