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ばあちゃん

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kodak T-MAX100 sakae/aichi


 じいさんの次はばあちゃんだ。

 しかし、ばあちゃんに関してはあまり悪口や嫌な思い出がないので、昔の話をすることにする。

 子供の頃のオレはおばあちゃん子だった。母方の祖父母にとって見れば初孫に当たる自分を、それはたいそうかわいがってくれたのがばあちゃんで、だからこそとても懐いていたのだろう、といまにしてみれば思う。

 じゃあ、じいちゃんはといえば、別にかわいがってくれなかったわけではないし、祖父は祖父なりにオレの事がかわいかったんだろうなあ、とは思うのだが、そこは昔の日本男児を地でいく奔放な大工の棟梁だったから、働きに来ていた弟子に向かって鑿を投げつけたりする激昂ぶりを何度も目の当たりにしていた子供のオレにしてみれば、当時はただ怖いだけの存在でしかなかったのだ。

 父親は大工の棟梁であるじいちゃんの元へ弟子として入ってきて、祖父母の娘である母と知り合って結婚し、そうやって俺が生まれた。

 両親共に働いていたから、隣町で暮らすオレはまだ幼児の頃からよく祖父母に預けられていたらしい。1~3才頃の記憶なのであまり鮮明には覚えていないのだが、1歳半下の弟が生まれることになった前後も、きっとばあちゃんに世話してもらいながら、オレは大きくなっていったのだろうと思う。

 ある日、仕事をしている母の元に、声を引きつらせたばあちゃんから電話があったそうだ。物凄く慌てた様子で、オレを道端で遊ばせているとき転んでしまって、額がぱっくり割れてしまった!と泣きそうになりながら。

 怪我自体はたいしたことはなかったのだが、2才の子供の額から血がだらだら流れ出る様はさぞかし怖かっただろうと思う。ふた針縫うくらいの怪我でしかなかったのだが、それは今でもオレの額に残っていて、ずいぶん成長してからも、そのときの様子を母から聞かされたものだった。

 鏡を見ながらその傷に目をやるときに、そのとき聞いた話のことをよく思い出す。

 じいちゃんは酒とタバコのやりすぎでもうずいぶん昔に死んでしまった。
 オレをかわいがってくれたばあちゃんも、リンパ節の癌で一昨年亡くなってしまった。

 自分のことを知る人が、そうやって1人づついなくなってしまうたびに、悲しいことでも忘れちゃいけないことはあるんだ、そう自分に言い聞かせることにしている。


 いまだによそのばあちゃんに対しても悪いことを言えないのは、そんな昔の記憶が焼きついているからなのかもしれない。





 
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by telomerettaggg | 2007-10-01 01:05 | Planar50/1.4