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sink deeply

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 成長する、ということは、不思議なことが少しづつなくなっていくことだ。と彼は思った。
 新鮮さが失われ、深く沈殿した澱みの底を見るとき、そのことを強く感じるのだ。底なし沼などないことを。あるいは無限を確かめる術などないことを。ただそこには、永遠かと感じるほどの日々と、地層が堆積していくかのごとく降り積もる水滴があるのみ。すくなくとも彼の主観ではそう感じられた。
 主観によらない客観はない、というのが彼の持論だ。どれだけ平均的な意見や、観測される事象を平らに伸ばした考えを述べたところで、それは自分という1つの個を通してみえる現実のごく一部でしかないのだ、というのがその根拠だ。ただ、情報量が増えるにしたがって、その客観的なビジョンが精度をあげるだけのこと。

 それでも彼は、世界を広げたかった。小さな二つの目をもっと違う現実に向けてみたかった。強く熱望した。 そしてこの降雨は、底のある底なし沼の深さを更に押し上げ、天井のある天井知らずの空を更に近くした。しかるべくして、彼の行く手をさえぎる壁は力を失い、今まさにそれを飛び越えられるまでになったのだ。
 
 そうやって、 frogmanは、潜ることをやめ、manであることを失ってまでも、その両足で草むらへと飛び跳ねた。素晴らしい世界を見るために。

 全てを見るには、絶望的なほど短い寿命を、更に縮めることになろうとも、彼はそうすることを望んだ。

 客観的に言えば、人間だって全てをやりつくすには短い一生だろ。そう嘯きながら。





  
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by telomerettaggg | 2008-06-09 11:11 | RICOH caplio R5