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僕の右手を知りませんか?

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 目が覚めると、僕の右手がいなくなっていた。

 寝ぼけ眼で左手に「右手はどこにいったか知らないか?」と尋ねると、左手はまぶしそうに電灯の明かりをさえぎりながら「知らない」と答えた。
 右目に「右手はどこに行ったかか知ってるか?」と聞いても「昨日は朝まで飲みに出かけていたから知らない」と答えた。左目は「寝ていたから知らない」だそうだ。
 玄関を開けて外を見回してみる。どこにも右手は見当たらない。
 ベランダであくびをしている猫に「僕の右手がどこに行ったか知りませんか?」と尋ねると、猫はごろんと仰向けになって、「カラスに聞いてみたら」と答えた。カラスはどこにいるのだろう。そう重ねて聞いたら「尋ねてばかりじゃなく、自分で探すことを覚えたらどう」とつれない返事。
 「それよりも早くご飯をおくれよ」とせがむ猫の声を聞きながら、僕は右手を捜しに外へと出かけた。
 カラスがどこかへ連れて行ってしまったのだろうか。それとも、僕がいやになって飛び出して、悪い人たちの仲間になってしまったのだろうか。電線の上や、屋根の上も探したけれど、見つからない。僕は苦しくなって、頭を掻き毟ろうとしたけれど、右手がいないと、そんな簡単に思える仕草さえできないことに気づいた。
 昨日まで、何も考えずに右手をこき使ってきたことを思うと、愛想つかされても仕方ないか、と思った。
 

 僕の右手を、知りませんか?





 

 
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by telomerettaggg | 2008-06-24 16:59 | Nikkor35-70/3.3-4.5