ゆらう
影の中で樹は揺れ動いていた。
どこかしこかで伝わる風のゆらう様は、まさしくその頭上まで伸び、針の一本にいたるまで微細な振動をもたらしている。尖り、突き刺さり、そして、ゆらう。
自縄自縛するような、どこか、はたから見ればいやいやをするような身もだえに、必至になってそれを押さえ込もうとしたけれど、樹の蠕動は収まることを知らず、共鳴かはたまた同期か、ますますそのうねりは大きくなっていく。
こらえきれない、そう感じて飛び跳ねた直後、樹はその根を自ら引き抜き、歩き始めた。
限界まで揺らし続けたその幹には、無数の亀裂が走り、その腕の葉はことごとく地に舞い落ちている。そうまでしてその場所から、ここではないどこかへ向かいたかったというのか。
自分の足で歩くことの出来る人には、わからない、彼らの感情。
by telomerettaggg
| 2008-06-28 16:59
| Nikkor35-70/3.3-4.5